『エリア88』第2話
「人の死に様を誰よりも多く見たものが死神と呼ばれる」
戦場はそれ自体が死神だと言っていい。昨今米国が展開している一方的な戦力、技術力の違う相手をボタン一つで葬り去るような戦場なら兎も角、あらゆる戦場はそれ自体が死神だ。いつ誰が死ぬか判らない。『エリア88』第2話『夕日の墓標』のレビューをお送りする。
「また…、パイロットが闇に沈んで行く…」
彼の名はボリス。対地攻撃の天才、どんな激戦地でも戻ってくる彼のニックネームは「死神」。対地攻撃の天才であるが故に彼が赴く戦場は激戦地中の激戦地なのだろう。彼と出撃したパイロットが彼と共に帰ってくる事は無い。だからこそついた「死神」のあだ名。風間真と同じクルセイダーに拘り、死んで行った者たちの事を決して忘れない彼はだからこそ心を病んでいた。死神と呼ばれる気分はどうだろうと整備兵に聞く新庄に帰ってきた答えはこうだ。
「人の死に様を誰よりも多く見たものが死神と呼ばれる」
だからだろう。彼が食事のテーブルにつけば彼の周りからは次々に人が立ち去り、ブリーフィングで出撃の意向を示せば上がった手が次々におりて行く。残ったのは風間と借金を背負いハリアーを駆るキム、そして数名の戦闘機乗りだけとなった。今回の出撃には謎が伴った。対した対空設備のないはずの補給基地、しかし出撃した3機の戦闘機は「何だありゃあ!」と言う叫びと共に撃墜されている。その正体は「砂漠の牙」と呼ばれる鉄製の構造物をいきなり立ち上げて戦闘機を落とすというもので、結局艦載機であるがゆえに主翼を折り畳む事の出来るクルセイダーで構造物の間をすり抜けたボリスと風間、そしてヴイトールと言う機体の特徴を活かしたキムの3人だけ、攻撃には成功したもののボリスは銃弾を受けて墜落する。
「真、基地に帰ったら部屋の明かりを消しくれ」
そう言い残して。
戦場へと赴いたものが負う心の傷は深い。死神ボリスは死んだ仲間達の顔が浮かんでくるのを恐れて部屋の灯を決して消さなかった。ベトナム戦争の帰還兵でもその心の傷に苦しんだ者が多い。こんな話がある。ある帰還兵が自分の母親に眠っている自分を絶対に起こさないで欲しい、と頼んだが、彼の母親は大した事は無いと思ったのか起き出してくるのが遅い息子を起こそうとした所、彼は反射的に自分の母親をゲリラと判断して絞め殺す所だったと言う。新庄は夕日のボリスの写真をたむけ、風間はボリスの言葉通りに部屋の明かりを消した。
「ボリス…、ゆっくり眠れよ…」
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Posted: 月 - 10月 17, 2005 at 06:58 午後