田中芳樹『摩天楼〜薬師寺涼子の怪奇事件簿』


とんと進まない小説のレビューを進めるために毎週金曜日は『小説の日』にしました。いつまでもつでしょう(^^;。

小説を読むのが遅い主催者自身にカツを入れるために考えた「毎週金曜日は小説の日(燃えるごみの日みたい)」、一発目は田中芳樹先生の『摩天楼〜薬師寺涼子の怪奇事件簿』である。この作品は中国歴史物を書くのに疲れた田中芳樹先生が息抜きのために書いた作品らしいのだが受けが良く、結局シリーズ化されて田中芳樹先生を苦しめていると言う噂である。
この作品の主人公はノンキャリアでは将来を嘱望された警察官、泉田純一郎である。33歳にして警部補、ノンキャリアとしては決して悪くない経歴なのだが、兎も角上司が悪い。薬師寺涼子、見た目だけなら正に絶世の美女。顔よし、スタイルよし、脚線美よし。おまけに東大法科を浪人も留年もせずに卒業し、国家公務員第一種試験に一発でパスしたエリート中のエリート、すなわちキャリア官僚である。年齢27歳にして本庁刑事部参事官、階級は警視。そして作品全体を眺めると、明らかに薬師寺涼子は泉田純一郎に惚れているのだが、最悪な事に性格が悪い。「ドラよけお涼」(この本が出版された時期「ドラまたリナ」の『スレイヤーズ』が流行っていたからパロディーと思われる)、その意味は「ドラキュラもよけて通る」である。かくて泉田純一郎氏は薬師寺涼子に振り回される羽目となるのである。
物語はこんな風に始まる。たまたま警察出身の政治家(の卵)のパーティーに泉田を伴って来ていたお涼だったが、突然会場となったベイシティー・プラザのセキュリティーシステムが誰かに乗っ取られる。会場はホテル、ショッピングモール等を含んだ複合施設で警察官僚を含めた多数の一般市民が閉じこめられたままになってしまう。薬師寺涼子は早速我が侭勝手に事件の捜査を開始、周りの人間に大迷惑を掛けつつ、しかも責任は全て上司に押し付けながら(部下ではないところが立派)事件の謎を解いていく。結局事件を引き起こしたのはバレオロザキスと言う大理石の中に住む伝説の怪物で、薬師寺涼子はこれを伝説の言葉を解き明かして退治、事件はベイ・プラザシティーの会長の妄想とコンピューターの暴走と言う線でケリがつく。警察がオカルトを認めてはいけないからだそうだ。
作品はスピード感があって読みやすく、それだけでも面白いのだが、何より傑作なのは(もちろん小説として面白くするために脚色してあるのだろうが)官僚と言うものの実態(?)がどういうものか、と言うのが面白おかしく風刺されている点である。事件現場では死人が何人も出ているのに官僚達はまず座る順番を決めないと話が始まらないし、いざ席を決めても事実上官僚しか居ないから(つまり命令する部下が居ない)全くの役立たずである。この他に薬師寺涼子のライバルの室町由紀子やその部下でレオタードおたくの岸本明と個性的すぎるキャラが光る。そして「この人がイラストを描いてくれないと締め切りに支障が出る」と田中芳樹先生が駄々をこねたと言われる垣野内成美先生のイラストも美しく、読んでも見ても目に楽しいお勧めの一冊である。

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魔天楼?薬師寺涼子の怪奇事件簿 講談社ノベルス

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Posted: 金 - 2月 20, 2004 at 01:10 午前