奥友志津子『パーフェクション』第3話


「もしかしたら悩みも苦しみもしない彼らこそ…本当のパーフェクションと呼ぶに相応しいのかも知れません」

パーフェクション(完全体)エメラダ博士が心血を注いで作り上げた人間の完全体。この作品が発表された当時はヒトゲノム計画の「ヒ」もなかったと記憶している。その中でここまで掘り下げた作品を作り上げた奥友志津子先生の先見性は評価に値すると思う。奥友志津子先生の『パーフェクション』第3話のレビューをお送りする。
ベス、ケインの二人が死んだ事をその独自のシンパシーで感じ取ったせいか、最後に残ったパーフェクション、ダフネからエースに暗号を使った連絡が入る。"Old Earth"(地球) で待っているので迎えに来て欲しいと言うのだ。フランとエースは早速地球へと向かうのだが、当のダフネは出立を1週間伸ばして欲しいと言う。この地で行われる祭の祭祀に選ばれていると言うのだ。フランは不満顔だったが、一度汚染し尽くされた地球は文明を持ち込みが極端に制限されており、その生活にも簡単には干渉できない事になっている。渋々承知したフランだったがその祭までの期間にちょっとした事件が起きる。ダフネが彼女の血液(要は DNA)を狙ったハンターに襲われ、特集能力で撃退したのだが、薬で眠らされたダフネは力のコントロールが出来ずにハンターの一人を俳人にしてしまうのだ。その事で氷の女と呼ばれたフランは情緒不安定になったのか、これまでの不安をエースにぶつけるのだが、彼はフランのその気持ちを受け止めた上で言うのだ。「私たちに逃げ道は無い。ケインとベスの失敗はまた私自身のものでもある」と。そして祭の夜に最後の事件は起こる。祭のクライマックスは祭祀の女性が永遠の契りの相手を指名し、二人でがけから飛び降りると言うものだが(がけはそれほど高くはなく、下は海になっておりボートで直ぐに助け出される手はずになっている)、ダフネはその契りの相手にエースを指名するのだ。「私たちが昔一つだった頃に帰りましょう」と。フランはエースに愛を告白して止めようとするのだがエースとダフネはフランに微笑みを残して崖から飛び降りるのだった。
救出された二人は意識を回復せず、本当の意味で悩む事もなく、苦しむ事ないパーフェクションとなった。DNA の操作によって現在様々な研究が進んでいる。人間の DNA を他の動物に埋め込んで臓器を作るプロジェクト等がそれだ。現状人間そのものを作る事はタブー視されているが、そのタブーが破られるのも時間の問題だろう。エース達のような子供を作るプロジェクトもタブーが破られた時、当然のように動き出す。しかし神ならぬ身で完全な人間を造り出す事など出来るのだろうか。地球環境さえも思うように回復できない人間に。エースを愛さずにいられなかったフラン。彼女は本当の意味でパーフェクションとなったエースをどう見たのだろうか。その思いは語られる事なくこの物語は幕を閉じる。尚、奥友志津子先生の『パーフェクション』にはこの他にエース自身のエピソードがが遺伝的に収められている。もう一話、お付合い頂きたい。

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Posted: 火 - 1月 4, 2005 at 01:36 午前