もんでんあきこ『KOSOVO〜浄化の大地〜』
「愛は憎しみを呼ぶ…、そして憎しみは憎しみを」
日本人はすぐに忘れるおめでたい民族なのでコソボ紛争の事を明確に覚えている方はそれほど多くはないだろう。かく言う主宰者も先日再放送された
NHK
スペシャル『世紀を超えて
〜戦争、果てしない恐怖〜』を改めて見るまでは忘れていたから人の事は言えない。ハイテク兵器を駆使した
NATO
軍がまるでテレビゲームの様な戦争を展開するのに戦慄を覚えるとともに、どんな大義名分をつけて見てもやはり戦争は人殺しなのだと言うことを再認識した。NATO軍の将軍は言う。「モニター画面のなかでうごめく点は人間なのだ。もう家族の元へ帰る事ない父親たちなのだ。そして私はいつか神の前でこの(一方的な虐殺行為の)言い訳をしなければならない」と。もんでんあきこ先生の『KOSOVO〜浄化の大地〜』のレビューをお送りする。この作品は先日レビューをお送りした『ANGE〜地雷原の天使〜』
に収録された作品である。
この作品の主人公ハサンはアルバニア人の母親がセルビア人に犯されて生まれてきた。二つの民族の血を持つが故にハサンには"民族浄化"と言う考え方が解らない。優秀な軍人であり、セルビア軍で二階級特進を蹴って退役し、KLA(対セルビア人ゲリラ)に身を投じ、常に最前線で戦果を上げ続けるが故に「鬼軍曹」と呼ばれるハサンには他の人間には見えないものが見える。人の憎しみを食って生きる女の妖精。彼女は次々に誰かに取りついては戦火を広げていく。そんな中で、あるアルバニア人の村がセルビア軍に襲撃される。村は壊滅、若い女性は慰み者にされる中でハサンは一人の女性を助ける。フラカ。彼女もまた家族を殺され、自らも犯された事で妖精に取りつかれていた。彼女は言う。自分を
KLA
に加えてくれと。セルビア人の殺し方を教えてくれと。こうして戦火は広がっていくのだ。ハサンはフラカを保護し、話を聞いてやり、いつか二人の距離は接近していくのだが、そうした中でハサンの部隊はセルビア軍に襲撃されて壊滅する。ハサンとフラカは二人で生き延びるが、ハサンを愛し、
ハサンが愛したフラカもまたセルビア人に殺害される。
ハサンは叫ぶ「セルビア人を根絶やしにしてやる!」その背中にこれまでハサンにだけは取りつく事の無かったあの妖精が取りついているのが悲しい。人は自分の近親者を愛するがゆえに憎しみは連鎖し、民族浄化と言う名の元に世界中で紛争が絶えない。かつて「嘆きの壁」でエルサレムを追い出されたユダヤ人が今度は同じ事をパレスチナ人に対して行ったのは記憶に新しい。いつになったら人は民族や国籍ではなく人間対人間として向き合う事が出来るようになるのだろう。
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上記の画像は白泉社殿の御厚意により掲載できました。ここに深く感謝いたします。
Posted: 火 - 3月 15, 2005 at 01:08 午前