シギサワカヤ『九月病』第2話
「例えば…自分の体に火を放って、…彼の凍った心を溶かす覚悟がないと」
最近は極端に少なくなったけれど読み始めると止まらない作品というのは確かにあって、この『九月病』はその中に入れていいと思う。けれどそのこの作品は何だか自分も一緒に九月病になりそうな、そう言う人を巻き込む雰囲気があってそれがこの作品の魅力であり特徴なのかもしれないと思う。『九月病』第2話のレビューをお送りする。
第一話が真鶴と広志の関係、そしてかつての婚約者のエピソードや広志の職場等、作品の背景にフォーカスしていたのと違い、今回は海老沢の存在が大きくクローズアップされた形になっている。広志と後輩の間を取り持とうとして彼が打ち立てた壁に阻まれた海老沢は広志に言う。「そのくせいざとなったらドカンと壁を打ち立ててこっちの事を切り捨てちゃう」そう言う海老沢に広志は「…そうですよ、救って欲しい。貴女が救ってくれると誓えるなら貴女に一生捧げても構いませんよ」と言ってのける。その言葉の重さに海老沢は気がついた。彼がもう引き返す事のできない道を一人歩いている事を。
序章の最後に登場する真鶴のセリフ「冷たい彼の指があたしの首を絞めるまで…」と言う下りも印象的だが、海老沢が後輩をたしなめるセリフもまた印象的だ。
「例えば…自分の体に火を放って、…彼の凍った心を溶かす覚悟がないと」
第2話を読む限り会社では非の打ち所の無いエリート銀行員である広志の事を唯一理解したのは彼女だったかもしれない。今後恐らく海老沢がストーリーに絡んでくる事になると想う。(総集編(2)の表紙は海老沢が出ているし、電話でではあるが広志に告白してきている)そしてまた妹真鶴の海老沢に対する嫉妬心が現れるシーンも興味深い。第2話の後にシギサワカヤ先生自身「彼らを理解はしますが同情はしません」と言う作品を描く時のスタンスを書いているが、確かにそうでないとこの作品は描けないと思う。作品の最後、広げた風呂敷を畳む時、作品の登場人物達に救いがあるかどうかが一つのポイントになる事が多いが、この作品はどんな風に広げた風呂敷を畳む事になるのだろうか。
Previous
|
Nextシギサワカヤ『九月病』(1)のご購入は下記
Link からどうぞ !!
『九月病』シリーズは『
虎の穴』、『
メロンブックス』、『
コミティア』で取り扱っています。
上記同人誌書影はシギサワカヤ先生のご厚意によって掲載させて頂きました。深く感謝いたします。
『九月病』は在庫希少となっております。ご購入はお早めにどうぞ。
Posted: 土
- 7月 23, 2005 at 03:57 午後