シギサワカヤ『九月病』第2.5話


「…生理、来ないなあ…」

舞台が道内だからだろうか。九月は日差しは夏なのに空気が冷たいという下りが広志と海老沢の間で交わされるのだが、今の首都圏ではそんなことはなくて、九月の空気は夏と同じで残暑が厳しい。特に母が他界した昨年は時間の感覚が完全にずれていて何時までも夏が続いているような妙な感覚だったのを覚えている。カレンダーを見ればもう12月なのに嫁さんと二人で「夏なのに何でこんなに寒いんだ?」と言う訳の判らない会話が平然と交わされていたのを今でも覚えている。そういう意味では広志の時間感覚もまた同じように狂ったままなのかもしれない。シギサワカヤ先生の『九月病』のレビューをお送りする。
広志と真鶴の生活は相変わらずで、狂気と正気の中間を綱渡りするような危ういバランスを保ちながらそれでも時間は過ぎて行く。転勤を控えた広志は引き継ぎに忙しく、また前回のレビューでは書かなかったが、広志のかつての婚約者から電話がかかってきていたり海老沢が登場したりで真鶴も心中穏やかではない。広志は既に気がついていたができる限り広志に気付かれないように着信履歴を消して行く真鶴の行為は何処か後ろめたい感じがするし、広志は広志で着信履歴を既に見ていてそれが誰だか既に判っていて複雑(と言うよりそれがどういう感情なのか既に麻痺してしまっている)な心境だ。そう言えば主宰者が嫁さんと別れて何年か疎遠だった頃、一年置きに送られてくる嫁さんからの年賀状に妙に複雑で忌忌しい思いをしたのを今でも覚えている(主宰者は2年連続で理由なく年賀状の返事が来なかった人には年賀状を出さない事にしている。きりがないから)。
広志にとっては九月の日差しは何もかも忘れてその身を預けたくなる不思議なものらしい。ただそのセリフの前後が海老沢との九月に関する会話のシーンである事からそれが九月の日差しそのものなのか、それは単なる象徴であって海老沢の事なのか判然としない。そんな中で日数を数え、ぽつりとつぶやく真鶴の言葉はインパクトが強い。

「…生理、来ないなあ…」

これから二人は何処へ向かうのだろうか。二人にとっての救いは訪れるのだろうか。

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Posted: 月 - 7月 25, 2005 at 05:03 午後