オトコの見る夢 〜 二宮ひかる『初恋』後編 〜


「帰るなって言えよ」

「二度目には情が絡むわ、三度目には本気になる…」…何時読んだ作品だったか既に判然としないほど前に読んだ、確か女性作家の書いた極道モノの作品でこのセリフはヒロイン自身の女性の言葉として登場する。罪を犯して逃亡するチンピラと娼婦のつかの間の恋物語を描いた作品だったと思う。二宮ひかる先生の作品のレビューでこの作品を引っ張り出すのが適当かはかなり悩んだのだが、しかし有る意味究極の「オトコの見る夢」だと思う。今週は『積ん読解消連盟』が先攻である。二宮ひかる先生の『初恋』後編のレビューをお送りする。

「帰るなって言えよ」

身体を重ねる内に主人公の少年が年上の彼女に言うようになった言葉。それはつかの間少年が見た夢だったと思う。気がつかない内に自分が恋い焦がれた女性(もし相手が一人暮らしなら)に言って欲しい言葉の Best 10 に絶対入って来る言葉の一つだと思う。「ねじ伏せられているようで、柔らかく開いて受け入れる」、思春期の少年がどれだけ彼女に恋こがれているかの自覚も無いまま、なし崩しのように続く彼女との半同棲のような生活。それは正に少年の見た夢だったように思う。そして現れた彼女の待ち合わせの相手。涙を流しながら決して追いかけようとはしない彼女の代わりにその男性を追いかける少年は初めて自分の気持ちを自覚する。「(最初は)誰でも良かったのはオレで、(今となっては)彼女じゃなきゃいけないのもオレで…オレだけで」
子供の出来ない身体、待てども来ない待ち合わせの相手。彼女にとって少年の恋心と女性に対して抱く「オトコの夢」は確かに救いに近いものがあったと思う。そして(これは主宰者の友人の受け売りだが)人間は「好き」と言う感情を心の中の引き出しにしまっておく事が出来るのだと思う。涙を流して待ち合わせの相手を見送った彼女の感情もまた同じように彼女の心の引き出しからつかの間引き出されたそうした感情だったのではないかと思う。しかし少年はバイトを辞め、彼女の部屋にい入り浸るのも止めてしまう。そうしていながらも少年は夢を見続けている。

会いたかった、会いたかった。会いたかったの

手を差し伸べ、涙を流して喜ぶ彼女の姿、それは少年の見る夢。しかし二宮ひかる先生は作品の解説の中で書いている。「『もしかしたら、今日あたり…』と彼女は思っている」…と。

「二度目には情が絡むわ、三度目には本気になる…」

彼女もまた、もしかしたら、そうした夢の住人なのかも知れない。

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コミックス『初恋』の書影画像は白泉社様のご厚意で掲載させて頂いています。

Posted: 月 - 8月 8, 2005 at 10:40 午前