田中ユタカ『愛人[AI-REN]』第17話
「そうね、あなたは…一緒に生きようって言ってくれたものね」
臨死体験、死の淵から帰ってきた人達の証言は様々だが、文化的な違いからか欧米と日本では報告例に差があるようだ。日本では自分の大好きな人(伴侶や両親等)が迎えに来る、と言う話が多い。母から生前聞いた話で亡くなる直前に「ああ、お母さん待って下さい。ゲタの鼻緒が切れてしまいました」と言って亡くなった方がいるそうだ。田中ユタカ先生の『愛人[AI-REN]』第17話『君とみる青空』のレビューをお送りする。
イクルを迎えに来たのは成長したアイだった。寂れた自分達の家でイクルを迎え、「ユーレイ」「イクルと同じになったの」そう言って微笑むアイにイクルは懺悔する。自分の罪、アイを愛人としてよみがえらせた罪を。
「君を守ると約束したのに…ひとりで死なせてしまった…」
もう一度凍結するチャンスもあった。しかし手放したくなかった。イクルは繰り返す。「ボクが殺した」しかしアイは微笑み彼を許す「わたし、一生懸命生きたわ」そう言って。アイの小さな許し、苦しむ事もない世界への扉を死神に抱かれて目の前にした彼には、それでも聞こえてしまった、アイが自分を呼ぶ声が。
「まだだ!本当はまだなんだろう!!」
生への執念を見せるイクルに彼を連れて行こうとした真っ黒な死神は美しく成長したアイへと変貌して言うのだ。
「そうね、あなたは…一緒に生きようって言ってくれたものね」
もう十数年も前に他界した父が臨終の床にある時、家族が呼びかけると何度か止まっていた心臓が再び動き出したと言う経験を主宰者は持っている。また、臨死体験の中、大好きな人が迎えに来ても「困ったなあ、オレ、まだする事があるんだけど…」と躊躇していたら助かってしまったと言う話も聞く。イクルの生への執念、そして彼自身のアイを守りたいと言う強い意志が彼を死の淵から連れ帰ったのだと思う。二人はイクルがアイに初めて見せた海辺へ自転車を走らせる。「好きな人がいる。生きる理由ならそれで充分だ」全く持ってその通りだと思う。二人の目に映る青空は本当に奇麗に見えたと思う。
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Posted: 日 - 8月 21, 2005 at 08:00 午後