橘裕『人形師の夜』(1)第2話


「弟は神隠しにあったのだ」

自分の大切な人が自分の無神経な一言でひどく気付き、そして消えてしまったとしたらあなたは自分を許せるだろうか。この世の中には自分を自分自身で裁いてしまう人もいる。そうした事が本当に意味があるのだろうか。橘裕先生の『人形師の夜』第1巻第2話のレビューをお送りする。
久しぶりに帰省した主人公の青年が帰省したがらないのには理由があった。自分の心無い一言が自分の弟を傷付け、弟は「神隠し」にあい帰ってこなかったからだ。久しぶりに帰ってきた自宅は新築されていたが両親はちゃんといなくなった弟の部屋を作っていた。その事が更に彼を追いつめる。そんな時、青年につきまとい、あまつさえ石を投げつける少年がいた。青年の目にはそれが神隠しにあった弟に見えたのだ。そして青年に届けられる

「兄ちゃん助けて」

と書かれた手紙。青年は少年を追いかける。少年は自分自身を裁こうとする自分自身だった。弟は神隠しにあったのではない。誰かに殺され、山中に埋められていた。
このエピソードの中に開発された新しい都市が自分の居場所の分からなくなる出口のない箱庭のようと言う記述があるが、その街はかつてそこにあった森のように感じたかも知れない。主宰者が生まれた場所は海と山に挟まれた場所で小さい頃海には海の神様、山には山の神様がいてひとりでいったら連れて行かれてしまうので絶対に一人でいかないようにと言明されていた。多分主人公の青年は新しい街をそんな場所に感じたのだろう。執拗に青年の償いを主張する少年時代の青年に人形師は優しく言って聞かせる。

「償いなんていらない。あなたには幸せになる義務がある」

本当にそう思う。今の世の中狂っていて、正常な感覚の持ち主ほど利用され使い潰されて行く。「幸せになる義務がある」その言葉に共感する人が多いのではないかと思った主宰者であった。

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橘裕『人形師の夜』(1)白泉社花とゆめコミックス

コミックス『人形師の夜』の書影画像は白泉社様のご厚意で掲載させて頂いています。

Posted: 木 - 8月 25, 2005 at 07:10 午後