冬目景『イエスタディをうたって』第8話


一方的なハルの宣戦布告ですが…

この企画も随分と久しぶりである。あんまり時間が空きすぎると忘れてしまうし、ましてや『イエスタディをうたって』と言うもう8年も前に始まった作品である。最初に読んだ頃の事なんて殆ど記憶にないし、仕事や他の作品のレビューに忙しくて『イエスタディをうたって』の最初の方を手に取る機会は少ない。『ゆびさきミルクティー』は後数話で補完が完了するのがイエスタディをうたってはこのサイトがスタートした時点で既に第33話まで来ており先は長い。兎も角亀のごとき歩みでも着実に第32話までを補完したいと思う。冬目景先生の『イエスタディをうたって』第8話のレビューをお送りする。

「あたしね…、本当は好きな人がいるの。」「でも…もういないの」

ハルの一方的な宣戦布告を受けた榀子が返した言葉である。死者と言うのはある意味最強である。悪い所は絶対に見えないし、思い出というのは大概美化されるから踏ん切りをつけるのも難しいと思う。ただ個人的な経験上、男性の方が初恋の人に拘りを持っていたりする事が多い気がする。榀子のような女性像は日本人男性からみてきわめて好ましいとされているのでそんな設定にしたのかも知れない。
一方のハルがこの言葉の前に榀子に話した

「目の前にあんのに何時までも手の届かないモノの方が価値が上なんだよね」

と言う言葉も大いに納得できる。例えは悪いが主催者は吹奏楽部、オーケストラで Horn を吹いていた。大学 2年になるまで自分の楽器を持っておらず、兄の楽器を借りて吹いていた。現在はそういう呼称は無くなったが YAMAHA のプロモデルで型番は YHR664。音程も安定していて吹きやすく、アマチュアには持って来いの楽器なのだが、大学から帰る途中に当時あった楽器店のショーウィンドウに当時 YAMAHA のフラッグシップモデルだった YHR864 が置いてあった。既に無くなった型番だが、明るい遠鳴りする音色、ヨーロッパ風の優美な曲線を描く管の巻きに魅了されてどうしても欲しかった。長期の休みに集中的にバイトをしてやっと手にしたその時の感動を今でも覚えている。そんなことを思い出すとハルの

「それじゃオトモダチもやめてよ」

と言う主張も納得できる内容である。
奇しくも同じ情報を榀子の幼なじみである浪から入手したリクオはバイトを無理やり抜け出してしまうのだが、この事が後々この作品を長期戦にしてしまうきっかけとなったのではないかと思っている。個人的な意見だが、『イエスタディをうたって』は読み返してみると1巻で一応の完結を見ている感が強い。恐らく冬目景先生はこの作品を1巻のみの作品として最初プロットを作成したのではないかと思われるのだが皆さんはどう思われるだろうか。ところで榀子から詳細を聞いて尚、ハルは気持ちを更に強くしたようだ。その台詞は平凡だが、これだけは今でも最初に読んだ時の感覚を覚えているから不思議だ。

「あたしやっぱり先生に宣戦布告する」

リクオは幸せ者だなあ(^^;。

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Posted: 土 - 11月 4, 2006 at 07:34 午後