榎本ナリコ『センチメントの季節』第三話


誰もが思春期に味わう、自分としての価値観の喪失、それを補う事の難しさを感じますね。

自分が特別になる為に、お互いがお互いの特別であるために少年と少女は逢瀬を重ねていた。榎本ナリコ先生の『センチメントの季節』第三話〜 なつかしのメロディー 〜をお送りする。
少年と少女は幼なじみだ。二人は思春期に入り、性的な関係を持つに到るのだが、それは少女の言葉を借りるなら「お互いがお互いの特別である」ための行為だった。自分たちは特別にはなれない。だからせめてお互いがお互いの特別になる為の行為だったと少女は語る。しかしその関係は少年がバイト先の少女と初々しい恋愛を始めた事で破綻に到る。少女の価値観のよりどころはもろくも崩れ去る事になる。
大学に進学し、久しぶりに帰省した少女は少年に出会う。しかしお互いは既にお互いの特別ではない。テレビから流れる懐かしいメロディーがそれを物語る。少女の涙は後悔か、それとも…。
思春期に、いや現代では多くの人が「自分は何故存在するのか」「自分は何の為に生きるのか」と言う命題に答が出せないでいる。大人がこの命題に答を出せないのに思春期の少年少女がこの答を導き出すのは難しいと思う。その心の空白を埋める為に異性との関係を持つ。思春期のころは異性を意識し、性を意識し始める時期なので、その方法は手っ取り早いし、自分の思う相手の"特別"になれれば自分の存在意義を証明できるという考え方には一理あると思う。こういった価値観が現在大いに取りざたされ、問題視されているが、これまでの価値観が崩壊したにも関わらず未だに新しい価値観を構築できないでいる大人にこそ、こういった問題の原因があるように思われてならない。

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Posted: 月 - 3月 8, 2004 at 01:33 午前