橘裕『人形師の夜』第一巻


橘裕先生の『だって愛だもん』のレビューが好評だった事をいい事にお気に入りの逸品をレビューしようと思います。

人は自分が死ぬ時に何を思うのか。誰に何を伝えようとするのか…。そんなエッセンスが凝縮された橘裕先生の『人形師の夜』第一巻のレビューをお送りする。
この作品には"人形師"と名乗る女性が登場する。美しい、そして彼女の元にやってくる人たちの考えている事をまるで見通しているかのような彼女は依頼に従って望み通りの人形を創り出し、仮初の命を吹き込む。そう、彼女の元を訪れるのは命を落とし、そして誰かに何かを伝えたいと切に願う人たちなのだ。
橘裕先生の『人形師の夜』第一巻には『かなしいきもち』『ハコニワ』『神様ヘルプ!!』『99の嘘』『戦う男』の5つのエピソードが収められているが、『99の嘘』が特にお勧めだ。恋人に嘘をついたままバイクで事故死した青年が仮初の命で恋人の元に現れてみると、恋人はショックで記憶喪失になっていた。彼女を自分の家へと招き入れ、記憶が戻るまでここ居に居ればいい、記憶が戻らなければずっと居ればいい、と言う青年の命はしかし仮初の命ゆえに限られていた。そして彼女も徐々に記憶を取り戻して行く。もう一緒に居られない…、青年は最後の思い出にと彼女を遊園地へと誘い、最後に乗った観覧車の中で「強い君が好きだ」と言う言葉を残して去っていくのだった。
いつも書く事だが主催者は読んだ後に長い長い読後感を残す作品がとても好きである。そう言う意味でこの作品はそれぞれが小さな小品と言えるエピソードの集まりだが、それぞれが長い読後感を残す秀作が集まっており、一つのエピソードを読み終わる毎に本を閉じ、その読後感に浸る事が出来る逸品で、是非一読をお勧めする。

No previous | Next

Amazon.co.jp からの書籍のご購入は下記 Link からどうぞ !!



橘裕『人形師の夜』第一巻 花とゆめコミックス

コミックス『初恋』の書影画像は白泉社様のご厚意で掲載させて頂いています。

Posted: 土 - 3月 20, 2004 at 11:49 午前