奥友志津子『パーフェクション』第1話


この作品が発表されたのは昭和61年です。正に「早すぎた」としか言い様の無い作品です。絵柄こそやや古い感じがしますが、今読んでも全く遜色ないのが驚きです。

奥友志津子先生は今から20年程前に秋田書店で活躍されていた漫画家さんだが、非常に先進的であり、今から見ても驚くほど洗練されている。この『パーフェクション』にしても現在でこそクローンや遺伝子操作の危険性や倫理性が真剣に議論されているが、この作品が発表された1986年頃にこのテーマがしかも人間の自我や存在意義とからめて作品化された例はまれだと思う。
この作品の主人公、フラン・レーグ準中尉は女性ながら優秀な軍人であり、感情を表に出さない事から「氷の女」の異名を持つ。その優秀な彼女に与えられた新たな任務はなんとベス・エメラダと言う美しい女性を探し出す事、そしてその人物を探すためのキーパーソンであるエース・エメラダと言う男性の監視と言う、何ともつまらないものだった。フランはエースに対してあからさまにその不満を話すのだが、エースはこの仕事がそう簡単ではない事をほのめかす。彼女が逃げ込んだ惑星デランには何度も捜索隊を派遣したが成果は無く、腕利きの彼女の出番となった次第だった。エースは美しく端正な顔、1週間でデランの言葉を方言を合わせて3つも覚えると言う天才的な頭脳を持つ魅力的な男性だが、上司から言われたような「危険人物」には見えない。ベスの捜索はデランの王宮の協力を得て行われる事となり、フランはエースと共にホテルへと到着する。始めシングル2部屋を予約していたのだが、エースはそれをツインに変更するようにと言う。つまり、フランが彼の監視役である事を知っており、その方が都合が良いだろうと言うのだ。そして同じ部屋に泊まったフランは初めて動揺する。彼女はエースに魅かれ始めていた。何故?しかしエースは彼女に言うのだ。自分には恋愛は許されていないのだと。理由を聞こうとするフランを眠らせ、翌日奴隷市へと出かけた二人は何者かに襲われ、エースは瀕死の重傷を負うのだが、普通死んでいるはずの傷でも彼はびくともしない。魅かれる筈のない自分が彼に魅かれているという事実、普通なら死んでいるはずなのに死なないと言う事実、彼女はエースを問い積め、彼の口から真実を知るのだ。彼が完璧を求めて創られた人間である事、一緒に作られた人間が彼を含めて男女4人居る事、そして彼の遺伝子に滅びのプログラムが最初からプログラミングされてしまっている事。彼らの遺伝子は突然変異を起こしやすい。故に子供を作る事は出来ないが、天才である彼らの遺伝子を欲しがるものは多い。猛烈な商品価値があるからだ。そうした事実を知ってもなお、彼らの生と自由への渇望は強く、エースを除く3人のパーフェクション達は研究所を抜け出したのだ。ベスもその一人だ。そうしてついにエースとフランはその中の一人、ベスを見つけ出す。王の後宮でだ。彼女は王の子を身ごもっており、必死の抵抗を示すのだが、フランによって射殺される。
美しい容姿、ずば抜けた運動能力、優れた知性、そして天才的な才能。人々が渇望してやまないもの全てを持ちながら彼らは何をする事も出来ない。恋をすることさえも。彼らは人工的に作られた。だからと言ってそれが何だと言うのだろうか。しかし彼らには行動の自由も、精神的な自由もない。その絶望的な状況の中で彼らが見つけ出すものが何なのか、ご一緒に考えていきたいと思う。

関連記事 : http://gonbe-0515.at.webry.info/200510/article_4.html

No previous | Next

Amazon.co.jp からの書籍のご購入は下記 Link からどうぞ !!



奥友志津子『パーフェクション』 ボニータコミックス

上記のイメージ画は Amazon.co.jp アソシエイトプログラムの許諾の下に掲載しています。

Posted: 日 - 12月 12, 2004 at 11:56 午後