榎本ナリコ『センチメントの季節』第二話


自分が「存在する証」を「考える事」に求める少女は…

「我、思う。故に我在り」しかし彼女のように真剣に考えなくても存在する多くの他者。彼女はそこにある種の優越感を感じていたのだろうか、それともそれだけがいちるの望みだったのだろうか。榎本ナリコ先生の『センチメントの季節』第二話をお送りする。
少女に声を掛けたのは官能小説を書く小説家だった。彼は彼女に取材を申し込むが彼女は自分は適任ではないという。「あたし不感症だから」「試します?」そうやって逢瀬を繰り返す二人。その間中彼女は考えていた。考えていないと自分が居なくなる。それは一種の恐怖感に取りつかれているかのようだった。自分の存在を証明し続ける彼女にある日小説家は自分の新作を少女に手渡す。そこに描かれ居たのは間違いなく自分自身。「これ書く時あたしの事考えた?」「ああ、それはそうだよ」彼の中にも自分が居る。その安心感から彼女はその時考えるのをやめる。
行方をくらました小説家の部屋で、少女は何を思ったのだろう。「考えるから存在する自分」「考えているのに存在しない相手」自分の存在感が希薄になったのを感じたのか、それとも「我、思う。故に我在り」と言う考え方に疑問を呈したのか、それとも…。
現代は人間関係が希薄になっているという。どこかで「人は他者との関係があって初めて人足り得る」と言うような事を読んだ事がある。その希薄な自分と希薄な人間関係を一瞬埋める事が出来が故に、少女の存在は一層希薄さを増したのかも知れない。

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Posted: 火 - 3月 2, 2004 at 01:26 午前